SPECIAL

オープニング映像秘話!!!立川監督×亀田祥倫×依田伸隆SP対談!!!!!

SPECIAL. 03
オープニング映像の制作秘話をお届け!!!!!
絵コンテ・演出:立川譲監督、作画監督・原画:亀田祥倫さん、モーショングラフィックス:依田伸隆さん(10GAUGE)、によるスペシャル対談が到着!!!!!
――まずは監督から、今回のオープニングのコンセプトからお伺いできますか?
立川 第1期のときは、絵コンテの段階でどんな映像になるか、きっちりと決め込んでいないカットも多かったんです。それこそバラバラに作った素材を依田さんにお渡しして、あとはこちら側のイメージをお伝えしたり、参考映像を観ていただいて、組み上げてもらうカットが多かった。僕の中にはないアイデアを入れ込んでもらって、できあがったものを見てみたいという気持ちが大きかったんです。
――結果として、第1期のオープニングは非常に賑やかな印象のものになりました。
立川 それに対して第2期は、絵コンテを描いている段階で、完結しているカットが多かったんですよ。僕自身、完全に自由な状態で作るよりも、ある程度、縛りを作った方が作りやすいタイプなので、いろいろと悩んだ結果、今回は「錯視」をテーマに据えようと決めて。第1期のときの「ビックリ箱をひっくり返したような雰囲気」は残しながら、そこに「錯視」というモチーフを足して、さらにパワーアップしたものにしよう、という狙いでした。
亀田 なので、コンテを最初に見たときは「あれ? わかりやすいな」と(笑)。前回とは違って、今回は作画でやる作業量の見通しが、わりとすぐについたんですよ。「冒頭のゾートロープのカットは、大変そうだな」とか(笑)。
立川 そうそう。じつはゾートロープのカットも、最初は作画でやろうとしていたんです。コンテが全部完成する前に、あのカットがまずできたんですけど、内容が大変なのはわかっていたので、まずここだけ制作に渡して「とりあえずアニメーターを見つけてくれ」と言って。ところが、全然描いてくれるアニメーターが見つからなくて(笑)。
亀田 あれを作画でやるのって、とんでもなく難易度が高いんですよ。だって、ちょっとずつ形の違っているものを、回転させなきゃいけないわけで、正確な3D把握能力がないと絶対に描けない。もう、頭がおかしいんじゃないかと(笑)。いくらなんでも、これをゼロから手で描くのはちょっと……っていう。最初は3Dでモデルだけ作ってもらおうか、っていう話もしていたんですよね。
立川 ベースだけ3Dで作ってもらって、その上から作画を乗せよう、と。で、そうこうしているうちに、チープな3Dだったら作品の方向性に合うかもしれない、という話になって、急遽、3Dさんにお願いすることになったんですよね。しかもその3Dさんが、もともと原作が好きな方で。『モブサイコ100』は第1期では、ほとんど3Dを使わなかったんですけど、すごくやりたかったらしくて。ありがたかったです。
亀田 改めて見てみると、3Dのキャラクターも上手く似せてくれてますよね。テル君とか、すごくよく似てる。
依田 いや、めちゃくちゃ似てますよ(笑)。
亀田 まあ、そんな感じで「ゾートロープのとこは大変だぞ、俺は絶対にやりたくない」と思ってて(笑)。次のルービックキューブのカットは、止めの絵を描けばいいだけだから、楽そうだな、とか。あそこは最初、モブと霊幻だけでいいって話をしてたんですよね。ただキューブは全部で6面あるので、もしかしたら見えるかもしれないなって思って、こっちで勝手にエクボと律とテルを足して。
立川 あれもじつは、冒頭のゾートロープからの流れで考えてたんですよね。3Dのゾートロープから始まって、次のルービックキューブで立体から平面に変化する。で、次のスライドアニメーションで、それこそアニメの原点に戻る、みたいな。わかりづらいんですけど。
依田 そうだったんですね。単純に、古今東西、いろんな錯視の技術を使っただけなのかと思ってました(笑)。
亀田 でもまあ、3Dから平面っていう流れがあるんだな、っていうのは、コンテを見たときにわかりましたけどね。それに関連して、ひとつ後悔しているカットがあって、あの、モブの顔のパーツがレイヤーにわかれるカットがあるじゃないですか。
立川 ああ、ありますね。
亀田 あそこは、真横から見たときに真っ平の板みたいにしておくべきだったなって。せっかく立体から平面へ、っていう流れができてたのに、あそこでまたちょっと、立体感が出ちゃったなと思ってた。でも、あそこはアニメーターさんの原画がよかったんですね。
立川 そう、絵がよかったので。じつはあのアイデアって、大学のときの卒業論文が元ネタなんですよね。
――卒業論文……ですか?(笑)
立川 そうなんです(笑)。卒論で扱ったテーマが「レイヤーを重ねて作った映像と、ひとつのレイヤーで勝負した映像では、どちらが影響力があるのか」みたいなテーマだったんです。で、一応、1枚絵の方が強いという結論にしていて……。
亀田 それはどうして?
立川 うーん、忘れちゃった(笑)。ただ、あのカット自体もその論文のコンセプトに沿っていて、最初は1枚だった顔の絵が、複数のレイヤーに分解されて、最後はまた鉛筆タッチの1枚絵になるっていう。
依田 ああ、そこにパワーが宿っているという。マジメなことを考えてたんですね。
立川 そうそう、当時はね(笑)。
――依田さんは今回も、モーショングラフィックスでクレジットされていますが、どのあたりを担当されているんでしょうか?
依田 先ほど話題に出ていたルービックキューブとかドミノのカットですね。あとはカットの間を繋ぐトランジションの処理とか、テロップワークとか……。僕も亀田さんと同様、今回はわりとコンテの段階で、かっちりとできあがっていた印象でした。
――ドミノのカットというと、具体的にはどんなことをやってるんでしょうか?
立川 あれはまず1体ずつ、バラバラの素材として用意していて。それを本当のドミノみたいに、重ねていってるんです。
依田 3Dレイヤーでどんどん重ねていって、奥に向かってカメラが進んでいくように設計すればいいんですけど……。ことはそう簡単ではなくて(笑)、ドミノが倒れたときには次のドミノが見えてないとおかしいんですけど、とはいえ見えすぎてるのもヘンなんですよ。なので実際は、ドミノが倒れてカメラが奥に進むにしたがって、どんどん後ろの方のドミノがせり上がってくるような仕組みになってます。
立川 カットの大まかな設計については、タイムシートを用意したんですけど、ドミノの部分に関しては、一切何もなくて。素材だけ渡して、依田さんにまとめてもらった感じです。あとあのカットに関しては、制作と行き違いがあって(笑)。今は作画のキャラクターがパタパタ倒れてるんですけど、最初は止めの絵を倒す……って勘違いされてたんですよ。要するに、3Dの板にキャラをペタッと貼り付けて、それがどんどん倒れてくっていう。
亀田 僕も最初、そう思ってた(笑)。
依田 俺も同じ打ち合わせに出てたけど、止め絵でやると思ってました(笑)。
立川 打ち合わせのときからずっと、「作画で倒す」って言ってたんですけどね(笑)。
亀田 そうしたら、飯塚(倫子/ラインプロデューサー)さんがある日、「えっ、動かすの!?」って(笑)。
立川 たぶん深夜の2時とか3時だったと思うんですけど、半分キレた飯塚さんから電話が来て「これ、マジで作画で倒すつもりなの?」って言われて(笑)。いやいや、最初からそう言ってたから!
亀田 そこですごいぶつかってましたよね。
立川 そう。で「何体よ?」って聞くから、「キービジュアルに出てる人全部」と。ただ、キービジュアルに出てる人って、全部で60人くらいいるんですよね(笑)。「それは絶対に無理!」って言われて、まあ、戦った結果、最終的には40人くらいになったんですけど。
亀田 大差ないっていう(笑)。
――いずれにしても、すごい労力がかかっているカットですよね。
亀田 たぶんあのドミノのカットが、一番時間がかかってましたよね。
依田 何度も何度も、調整してできた感じでしたね。ドミノが倒れていくスピードも、最終的には今の速度で落ち着いたんですけど、最初はもうちょっとスピードが早くて。
立川 せっかく描いてもらったのに、早すぎてほとんど見えないような感じだったんですよ。
依田 なので、一度遅くしたバージョンも作ってるんですけど、それを見た亀田さんが「早い方がいい」って言い出して(笑)。
亀田 いや、やっぱりドミノ倒しっていうと、昔、テレビとかで観た、あのスピードの気持ちよさがあるじゃないですか。たしかに作画はもったいないけど、こちらとしてはあくまで素材というつもりだし、どう使われてもいいですよ、みたいな感じだったので。であれば、もっとスピードが速くてもいいなっていう。
依田 その話を聞いて、ウチの会社の子と「亀田さんは、いろんな動きを描きすぎた結果、普通の人より動体視力がいいんじゃないか」って話してました(笑)。たぶんあのスピードでも、亀田さんは気持ちよく見えてるんだろう、って。
亀田 いやいや!
――あはは(笑)。テーマが「錯視」だけに、さまざまな目の錯覚を利用した映像が続くこのオープニングですが、後半は打って変わって、迫力のあるバトルシーンが続きますね。
立川 じつは自分の中では、バトルシーンを入れるのにちょっと抵抗があったんです。ただ、普通にバトルをやるんじゃなくて、実写の背景にセルのアニメーションを重ねるのであれば、「錯視」っていうコンセプトに近づくかな、というのもあって……。
亀田 いやいや、それは「錯視」じゃないですよね(笑)。
立川 まあね(笑)。ただ本来、ああいうカットをやろうとしたら、まず最初に実写の背景を撮りにいくのが常道なんですよ。先に実写を撮って、使う場所を決めて、それをアニメーターに渡して描いてもらう……っていうのが、正しいやり方なんです。でも今回はそこが逆になっていて、アニメーターさんに先に動きを描いてもらって、その動きに合う背景を撮りに行った、っていう順番になってるんです。
――そうだったんですか!
立川 『モブサイコ100』で、ああいうシーンを作ろうとしたら、たぶん背景動画(※手前のキャラクターだけでなく、背景まですべて、作画で描く手法)でやるのが普通なんですよ。でも今回は、あえて実写を使うことで、オープニングにバトルシーンが入っててもいいのかな、と。実際のところ、最初に撮った実写はまったく使えなかったので、改めて撮り直したりしてるんですよね。しかも、よく見ると微妙にズレているところもあって……。その誤差がまた錯視なんじゃないか、っていう(笑)。
依田 撮影でかなり調整してますよね。できあがったのを見ると、すごく上手く合わせてるなと思って。……まあ、錯視ではないと思いますけど(笑)。
――なんか「錯視」がギャグのオチみたいになってますけど(笑)。
依田 あと、背景を単色にしたのがすごく効いてますよね。
立川 あれは、ちょうどこのオープニングで悩んでたときに、Olli(オリー)っていうアプリが流行ってたんですよね。
――撮影した映像を、アニメ風の線画に加工してくれるアプリですね。
立川 さっきも話したように、オープニングのサビのところにバトルシーンを入れるのに抵抗があったんですけど、こういうふうになるんだったら、「錯視」っていうテーマにも通じるところがあるんじゃないかなと……。
依田 自己暗示をかけて(笑)。
亀田 ああいう加工をすると、シルエットで見えるのがいいですよね。影とノーマルだけになっていることで、見た人が勝手に立体感を補正してくれるっていう。
依田 そういえば「錯視」で思い出したんですけど、最後の方に「YOUR LIFE IS YOUR OWN」って文字が出るカットがあるじゃないですか。あそこで文字がこう、スライドするときに一瞬、「MOB PSYCHO 100」になるんです。
立川 一瞬だけね。
依田 あのカットは、ウチ(10GAUGE)の子が担当してたんですけど、「なにかモーションでひと工夫したいね」って話してて。で、作業中に「あっ、思いついちゃいました」って言って、入れ込んでたんですよね。気づいてました?
亀田 (実際に映像を観ながら)あっ、本当だ。知らんかった!
――切り絵みたいに文字を分解して「MOB PSYCHO 100」になってるんですね。
依田 これは「錯視」なんですかね?
立川 「錯視」ですね(笑)。
――あはは(笑)。では最後に、今回の作業を振り返ってみて、監督はいかがでしたか?
立川 今回は普段、オープニングではやらないようなことをいっぱいやってましたね。それこそ首都高に実写を撮りにいったりとか。一体、何やってるんだろう? と思いながら(笑)。
――監督自身、演出までガッツリやったオープニングになっているわけですね。
立川 そうですね。というか、こんなわけのわからない作業を、人に任せられない(笑)。実際、いきなり仕事を振られても、どうしていいかわからないでしょうし。あとカッティングの段階では編集さんにお願いしているんですけど、その手前の段階――ひとつひとつのカットに関しては、自分の手元で編集してたりするんです。例えば首都高まで実写を撮りに行って、尺に合わせて短くするとか、そういう部分も自分でやっていて。もちろん最終的には、それぞれの部署のプロの人の手が入ってはいるんですけど、ある意味、自主制作っぽい作り方に近かったのかなと思いますね。

TVアニメ「モブサイコ100Ⅱ」オープニング映像



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